田舎移住のため購入した物件には、畑(農地)が付いていました。
農家じゃない自分は、畑を所有することができません。そのため、畑部分は仮登記での購入となりました。
そして購入から3年。念願の地目変更に成功。地目を「畑」から「山林」に変更して、無事、本登記となりました。
本記事では、仮登記で取得した畑を山林に地目変更して、本登記になるまでの流れをご紹介します。
農家じゃないから畑は仮登記
物件購入当時の自分は無知のそのもの。
- 「仮登記?何それ?別に大丈夫じゃね?」
- 「仮登記でも金はちゃんと払ったから自分のものでしょ?」
- 「仮登記だと何がダメなの?」
その程度の知識レベルで、仮登記となる土地、畑(230坪)を含む物件を購入しました。
そもそも仮登記をとは…
登記をすることができる権利を有していたり、将来的に権利を取得することが予定されていても、要件を満たさなければ登記の申請をすることができない。そこで、将来すべき登記の順位を保全したり登記の妨害を予防するために仮にする登記が仮登記である。
つまり「取得条件には該当しないものの、条件が整い次第、優先的に取得できる保証」のようなもの。
言い換えれば「お金を払ったけど、所有権は売主のまま」ということです。なんかモヤモヤしますよね。
そして、この「仮登記問題」の原因の大半が「畑」です。
畑、つまり農地は農家しか取得・所有できません。詳しい要件は省きますが、農地の取得・所有には「農家資格」が必要となります。
その農地を、何らかの理由で農家でない人が購入した場合、仮登記での引き渡しになるんですね。
地目に「畑」が含まれる中古物件は人気がありません。その理由がまさにコレ。そんな「厄介な物件」をまんまと購入してしまった過去の自分、マジあほ。
木を植えて地目変更計画スタート
仮登記をどうにかしようと思ったのは、物件を購入してすぐのこと。何かとお世話になっているご近所さんに相談したところ、
- 山林にしてしまえばいい
- そのためには、とにかく放置して草木だらけにする
- あと木を数本植えとけばOK
とのこと。
確かに、現状は畑というより雑木林。竹は生え放題、果樹も数本あるが、ほとんど腐ってる。この状態を役所の人に見てもらえば、山林に地目変更できるかも…。
すぐにホームセンターで桜の苗木を3本買い、適当に植えました。さて、何年かかるやら…。
司法書士事務所に相談して急展開
桜の苗木を植えてから3年。放置していた畑の地目変更計画が急展開!
南房総市が配布するチラシに、弁護士や行政書士による無料相談会を開催するとありました。そこには「土地の相続や登記など」と記載あり。
百聞は一見に如かず。ダメだったとしても無料だから。相談だけでもしてみようと予約しました。
そして当日。会場に足を運ぶと、そこには物件購入時にお世話になった司法書士事務所の方が。
こうなれば話は早い。「もしかすると、すぐにでも地目変更が可能かもしれない」と言われたので、その場で依頼しました。
後日、司法書士事務所にて説明を受ける。地目変更の手順は以下の通り。
- 農業委員会の審査
- 法務局の審査
- 仮登記の住所変更
- 地目変更
- 本登記
「農業委員会の審査」もしくは「法務局の審査」がNGなら、現時点での地目変更は不可能。ということで、地目変更が可能になったら料金発生という、成功報酬型で引き受けてくれました。
農業委員会の審査
前述しましたが、農地を統括しているのは農業委員会。我が家の畑の地目変更も、大前提に農業委員会の了承が必要とのことでした。
逆を言えば、農業委員会のOKがもらえれば、ほぼ確実に地目変更できるそうです。
ただ、農業委員会としては、農地を減らしたくない。農地あってナンボですからね。我が家の畑(雑木林)を見て、農業委員会が諦めるかどうか…。
地目変更を依頼して数日後、農業委員会の人が訪ねて来た。スーツ姿の二人組。
「どこからどこまでが畑?」「何が植えてある?」など聞かれ、最後に草木が生い茂る畑に踏み入って写真撮影。30分ほどで帰って行きました。
法務局の審査
農業委員会の人が来た数日後、法務局の人が審査に来ました。農業委員会の時と同じような二人組。質問も同じようなこと。
正直に言います。どっちが農業委員会で、どっちか法務局かは覚えていません。2組のおじさんが見に来たのは確か。
ただ、法務局が来たとうことは農業委員会の審査はクリア?これは期待が高まります。
地目変更&名義変更で本登記へ
それから約2ヶ月後。司法書士事務所から連絡がありました。無事、農業委員会と法務局の審査が通ったとのこと!地目変更が可能になりました!キタコレ!
(植えた桜の苗木は何だったのか…)
地目変更が可能となれば、あとは司法書士事務所にお任せ。
まずは、仮登記時の住所変更から。物件購入時の前の住所で登録されているのところを、現住所に変更。
次に地目変更。畑から非農家でも売買可能な山林に変更しました。
ちなみに、地目変更は土地家屋調査士による手続きとなります。依頼した司法書士事務所には土地家屋調査士も在籍していたためスムーズ。
最後に、山林(畑だった土地)の名義変更。
仮登記の名義変更は売主側での手続きも必要ですが、そうしたやり取りも全て司法書士が代わりにやってくれました。
畑の地目変更と本登記に掛かった期間・費用
仮登記だった畑を山林に地目変更して、無事、本登記されました。
司法書士に相談したのが2019年8月下旬、登記完了が2019年12月上旬で、手続きにかかった期間は約4ヶ月でした。
途中、2019年8月に台風15号、10月に台風19号の被害を受けたため長引きましたが、トントン拍子で進めば2ヶ月ほどで完了するのではないでしょうか。
司法書士事務所に土地家屋調査士が在籍していたことも大きいですね。
また、掛かった費用は10万円弱です。
調査 | 8,500円 |
---|---|
申請手続 | 18,500円 |
書類作成 | 18,000円 |
仮登記名義人表示変更 | 8,000円 |
所有権移転(仮登記の本登記) | 40,000円 |
登記事項証明書 | 1,000円 |
登記事前調査 | 500円 |
登録免許税・印紙税 | 3,000円 |
合計 | 97,500円 |
意外と高いな…といった印象ですが、自分では到底やれそうにない手続きなので不満はありません。
農地の地目変更は簡単じゃない?
今回は、比較的イージーなケースだったのかな?と素人なりに感じました。
というのも、
- 畑が公道に接してない
- 果樹ということで木々が多く植えてあった
- 成長の早い竹が多く生えていた
- 農家資格を有するほどの広さの農地じゃなかったなど
なんとなく、農業委員会が諦めそうな条件だったようにも思えます。これがもし、道路に接してたり、平坦な田畑だったら、いくら木を植えても難しかったでしょう。
農地の地目変更は、農業委員会の審査をクリアすることが最重要課題。ケースバイケースですね。
仮登記によるトラブル対策
最後に「購入した土地が仮登記のままだと、何がダメなのか?」という疑問について。
繰り返しになりますが、仮登記とは代金は払っているのに所有権は売主のまま、というとても曖昧な状態。
もし、売買契約した売主が亡くなって、仮登記の名義が売主の子供に変わったら?その子供がちょっと厄介者で、所有権移転登記(仮登記)が抹消されたら?
農地の仮登記をめぐるトラブルも、実際に起きているらしいです。そんな仮登記のトラブル対策として有効な方法が所有権の主張です。
今回、相談した司法書士によると「実質的な所有者は自分である」という証明が重要になるとのことでした。
最もシンプルな方法は、仮登記の土地に看板を立て、自分が管理していると主張すること。草刈りや害獣対策など、その土地を管理している証明になります。
また、売主側が支払っている仮登記の固定資産税を一括請求してもらい、領収書を発行するのも効果的。売買契約した日から清算します。
あとは、簡易的な誓約書を作成して、売主にサインをもらうなども有効。登記簿謄本とは別に、もし裁判になった際の有効な書類となるそうです。
ただ、売主が登記変更に協力的であれば、これらの対策は不要。農業委員会の審査がNGで、仮登記が長期に及びそうな場合、かつトラブルになりそうな売主だった場合の最終手段です。
何事も円満が一番。双方納得いく形で仮登記について相談しましょう。
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