道路の脇に横たわっていた動物の死骸を草むらに移動させた男の話し


道路の脇に横たわっていた動物の死骸を草むらに移動させた男の話し

渋滞ができるほど、交通量の多い道路だった。道路脇に猫のような死骸が横たわっているのを目撃した。

とある用事があったので、車を止めてどうするか考えることもできず、その時はその場を後にした。でも、頭の中はあの動物の死骸のことで一杯だった。

用事が済んだ頃には日が暮れていた。それでもあの動物のことが頭に残っていた。帰り道、あの死骸があった場所に近づくにつれ迷いが強くなった。

「土の上に移動させるか?今回は無視するか?」

そんな風に考えていたら、あの場所を過ぎていた。

「これじゃダメだ!そんな考えじゃ保護シェルター建設の夢は遠すぎる!」

そのまま近くのダイソーに立ち寄り、使い捨てのビニール手袋を買い、手頃な大きさのダンボールを譲ってもらった。そしてあの場所へ急いだ。

まだ死骸はあった。これだけ交通量が多いのにもかかわらず、あたりが暗くなっただけで午前中に見た光景と全く変わっていなかった。一体何台もの、そして何人もの人がこの死骸を見て見ぬ振りをしたのだろうか。

交通の妨げにならない場所に車を停めあの死骸に近づいてみると、思っていた以上に悲惨な状態だった。

胴体はねじれ、内臓が飛び出し、虫がたかり、生き物が腐ったあの独特な臭いがした。これまで何度か動物の死骸は見てきたが、その中でも一番悲惨な状態だった。

助けを呼ぼうと、近くの民家のチャイムを押そうとしたが、中高年には冷たい目線で変わり者扱いされるに違いない。

どう手をつければいいか分からない無残な状態と、車の窓越しに見てくるドライバーの視線で、なかなか死骸に触れることができなかった。そして、吐き気で何度も逃げた路地裏。

「ここまで来て諦めるのか?やるって決めたなら意地でもやれ!」

そう心で叫んで意を決めた。歩道でダンボールで箱を作り、横たわる動物の死骸の脚を持ち上げた。その瞬間に猫ではないと直感した。タヌキのような丈夫な獣の脚だった。

「船橋市にもタヌキがいるんだな」とを考えている間もなく、タヌキの死骸からはみ出した腸がミシミシと音を立てて伸びているのが目に入った。内臓も車のタイヤに惹かれ、そのまま地面に張り付いていたのだ。

自分でも信じられないグロテスクな行為がそこで行われていた。タヌキの死骸から伸びる腸を鬼の形相で引きちぎろうとする青年。そんな姿を見たドライバーはどう思っただろう。

なんとか地面から剥がれた腸をそのまま引きずりながらダンボールにタヌキの死骸を収めた。そして、タヌキの死骸が入ったダンボールを裏路地へ走りながら運んだ。

ダンボール越しに生温かさが伝わってきた。暑さのせいで温かいのか、死後間もないのかは分からない。ただ、腐敗臭がひどく運んでいる途中も吐き気がしていた。

運ぶ途中、その辺りに住む60代ぐらいの女性に遭遇してしまった。鬼の形相で箱から何かを引きづりながら小走りする青年。怪しまれてはいけないととっさにでた言葉。

「死骸!タヌキの死骸が!」

女性は驚きながら「死骸!?」と聞き返したが、自分はかまわず走った。草むらを見つけるとそこに駆け込み、ダンボールを置いた。そして中からタヌキの死骸を草の上に出した。

普段からポイ捨てだけは絶対にしない自分ですが、その時ばかりは血が滴り腐敗臭が染み込んだダンボールをその辺に投げ捨てた。喉まで来ている嘔吐物をこらえ、ビニール手袋を近くのゴミ箱に捨て、公園の蛇口で何度も手を洗った。

その後、息と心を落ち着かせて、もう一度タヌキの死骸を置いた場所へ行き手を合わせた。

「手荒な感じになった本当にごめんな。ここでゆっくり休んでな」

自分が動物の死骸を見捨てない理由

自分が動物の死骸を無視できなくなったのはつい最近のことで、きっかけはまだ会社員だった頃の朝の出勤中の出来事。

自宅から駅までの途中にカラスが地面に倒れていた。見た感じ、すっかり硬直しており、既に息はないのが一目でわかった。

「こんなアスファルトの上で最後を迎えるなんて可哀想だ」

そう思ったのだが、会社へ決められた時間に出社しなければいけない状況に、横目で見過ごすだけとなった。その後の出勤の電車の中で強く思った。

「もし会社員じゃなかったら、自分はあのカラスをちゃんと土や草の上に葬ってやれたのか?」

あのカラスを見過ごした理由が、本当に時間に余裕がなかったからなのか、それとも臭い物には蓋という考えで、ただ単に関わりたくなかったからなのかは、その時はまだ分からなかった。

その日の帰り、あのカラスの死骸はそこにはなかった。自分以外の誰かがなんとかしてくれたと安堵した反面、見捨てた自分に嫌気がさした。あのカラスは、ただ単にゴミとして処分されただけだから。

野生動物の死骸はゴミになる

知っている人も多いかと思いますが、日本では動物の死骸を可燃ゴミとして扱っています。道路で車に何度も轢かれ潰れてしまった鳩の死骸は、発見者の通報により市区町村の清掃事務所が処分しにきます。鉄バサミでつまみ上げ、そのまま黒いポリ袋に入れられる。自分も何度か通報したことがありますが、今思えばもう少し深く考えておけばよかったと後悔します。

参照:動物の死体を見つけました(東京都世田谷区)

また、道路以外であればその敷地の管理者が処分するでしょう。あのカラスが死んでいたのはコンビニの駐車場だったので、コンビニの店員か店長が店舗の前に設置してある可燃ゴミのゴミ箱に入れたのかもしれません。

動物たちの命の最期を変えたい

死んでいるとはいえ人間と同じ生き物。ゴミと一緒に燃やされる最期なんてあまりにも悲惨。せめて土や草の上で自然に腐敗し、虫や植物の糧となり、意味のある命の最期にしてやりたい。ゴミ箱の中でもなくアスファルトの上でもない。土や草の上で。

あのカラスこのこと以来、街中で死んでいる動物のことを強く思うようになりました。それが、自分が動物の死骸を見捨てない理由です。

自分が正しいと思ったことをやる勇気

道路で死んでいる動物を土や草の上に移動させるこの行為。見る人が見ればキチガイと思われるかもしれません。役所の作業員でもない私服の青年が、内臓が飛び出したタヌキを持ち上げてダンボール入れて小走りで持ち去る。これだけで十分キチガイですよね。通報されてもおかしくないレベルの変質者なのかもしれません。

でも、これは自分が正しいと思ってやったこと。何度も迷い、諦めては挑み、葛藤してとった行動。他人からの冷たい視線もガンガンに感じた。でも、次また道路に横たわる動物の死骸があれば、同じようにダンボールに入れて土か草の上に運ぶ。絶対に。

あの時は会社員で出社時間のことしか考えられなかった自分も、今はフリーランス。時間という縛りや言い訳ができなくなった分、自分の行動にも嘘がつけなくなった。

もう一つは、何千人というドライバーがあのタヌキの死骸を目にして、なんのアクションも起こさなかったことに、今の現代人の動物に対する考え方を痛感した。そもそも、死んでいる動物には関心がないんだなと思った。

「誰かが処分してくれれば幸い」
「きっと誰かがやってくれるだろう」
「誰が移動させたんだろう」

その誰かを自分がやる。

やらないことは簡単。やったからってお金がもらえるわけでもないし、称えられるわけでもない。もしかしたら、死骸の移動なんて自己満なのかもしれない。死骸を置かれた草むらの地主からしたらたまったもんじゃないですし、廃棄物遺棄みたいな犯罪にもなりかねません。

それでも自分は、動物達の最期を尊重したいと強く思うし、誰もやらないなら自分がやるしかないと思っている。自分が正しいと思ったことだから、今後もやり続ける。そう心に決めました。

ロードキル(轢死)は道路緊急ダイヤルにも報告

その後調べていると、動物が車に轢かれて死ぬことをロードキル(轢死)ということが分かりました。またロードキル(轢死)を見掛けたら国土交通省の道路緊急ダイヤルにも報告しなければいけないとのことでした。

国土交通省 道路緊急ダイヤル:#9910

基本的には道路の遺物や穴といった異常を通報するものですが、動物のロードキルも対象だそうです。飛び出してきた動物を避けようとして衝突事故が起きる!といったこともあるそうで、そういった事故を未然に防ぐためにデータを収集してフェンスの設置の検討も行うそうです。

参考:車にひかれた動物を見かけたら? 道路緊急ダイヤル#9910 へお電話を!

道路緊急ダイヤルに電話してみた

はじめは自動音声ガイダンスに従い、「首都高速」「その他の高速道路」「その他一般道」から選びます。そのあと、担当者につながり、道路名や住所、方面などが聞かれ終了。これだけ。Googleマップをみながらでないと、詳細な位置情報を伝えるのが難しいですが、これが今後のロードキル防止につながると思えばやるべきです。

しかしながら、動物共同墓地などに埋葬するならまた別ですが、国土交通省はロードキルのデータを収集するだけで、動物の死骸の処理は清掃事務所に横流し。結局はゴミとして扱うのでしょう。

ですので、道路に横たわる動物の死骸を見掛けた際の手順は次の通り。

  1. 動物の死骸を発見
  2. 土や草の上に移動する
  3. 道路緊急ダイヤルに報告
  4. 「死骸は自宅の庭に埋めました」という

動物の死骸の場所をいってしまうとゴミとして扱われてしまいます。それを防ぐためにも「自宅の庭に埋めた」と言うところがポイントです。

今後、車に轢かれて死んでしまう動物を減らすためにもこうした報告は地道にやらなければいけません。

活動記録

  • 2015年9月5日:千葉県船橋市飯山満町1丁目 県道8号線 能満寺付近
  • 2015年9月22日:千葉県習志野市香澄6丁目17 湾岸道路内
  • 2016年2月29日:千葉県松戸市高塚新田 国道464号線 高治園付近
  • 2016年6月14日:千葉県船橋市 船橋青果市場付近

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コメント

  1. 匿名 より:

    私も数年前、動物の死骸を見過ごせない時期がありました。歩道で潰れて乾燥している雀を木の下に移動させたり、道路で死んでいる犬を道の端に寄せたり、蛇の死骸を埋めたり、色々やりました。そういう時期ってやたらと見かけるんですよね。毎週のように生き物の死骸を見つけてはなんらかのアクションを起こしてってしてたのを覚えています、、、。そうして自分は善人だと思いたかったのかもしれません。
    確かに命を大切に扱おうという心は大切です。しかし、やるならば最後まで責任を持ってやるべきだと気付いたのです。ゴミを放置するなど以ての外、せっかくの善行が帳消しになってしまいます。運ぶのなら埋葬して手を合わせるとこまで、です。

    • マヒ マヒ より:

      ちゃんと土に埋められるようになるまで、もう少し経験が必要かもしれませんね…。未だ、直面すると手足が震えてしまいます。ただ「ゴミ」ではありません。生物であり自然界の物です。

    • 匿名 より:

      臭いとか衛生上の問題が出てきますので、道路の脇にどかすのではなくちゃんと埋葬してください。それが、最後までやる責任です。

  2. コンビニ店員 より:

    本日未明お客さんより、お店のすぐ前の道路で猫が轢かれていると報告がありました。まだ轢かれたばっかりな感じだけど放かっておけば踏まれてぐちゃぐちゃになりそうだねって言ってました。
    私はすぐその場を確認しに行きましたが、しっぽも長くて猫じゃなくてどうやらたぬきかも知れないと思いました。体は損傷はなさそうで頭部のみ損傷が激しかったです。おそらく即死でしょう。目玉が両方とも飛び出してました。かわいそう。
    通りは直線で結構なスピードで車やトラックがとっさに気づいて対向車線に全部はみ出るくらいよけていきます。正面衝突やトラックの横転事故が起こらないか心配になりましたが、他のお客さんにも相談しましたがやはりドライバーが危ないんじゃないかと言われました。
    居合わせたお客さんが死骸を移動しようかと言ってくださり、端の方まで移動してくださりました。とりあえず路肩の外の畑に移動しました。これだと畑の地主に良くないから役場が始業の時間に連絡しといた方がいいよと言われ帰られました。
    朝9時に市役所に連絡して死骸の引き取りをお願いしました。役所側の返答では業者に依頼して回収してもらうとの回答でした。でも後で調べてみると回収後はゴミとして処分されてしまうんですね。残念でした。せめて集団動物霊園などのお墓に行くかも知れないと思ってました。
    割と埋められる様な場所であれば埋めてあげたいのですが、今回の様な場所では難しかったのかもしれません。
    それでも遺体がばらばらにならないうちにお客さんと相談して救い出せたのは唯一良かったことかも知れません。

    • マヒ マヒ より:

      住処を奪われて、あげくの果てには引かれて、そしてゴミとして処分される。これほどまで残酷なことはないですよね。私も誰かの土地に寝かせるのはいけないことだと分かっていますが、それ以上に、死骸はゴミになるという事実が身体を動かしています。「きっとカラスや虫が食べて自然に還るはず」って言い聞かせてますが、やはり土に埋めるのがベストですよね。埋められそうな場所を見つけ、そしてその場所まで運べる精神力が必要だと痛感しています。

  3. 匿名 より:

    とても参考になりました。
    昨日、あぜ道に寄せ頭だけ土をかぶせておいたシラサギの死骸を、軍手してからビニールに入れて自宅に持ち帰って埋めて参りました。
    あぜ道は人様の所有物のため禁止されているとのことで、そうしました。

    線香を数本立てて、塩をまいて、手を合わせました。
    そのあと、気づいたことがあります。
    深夜だったためよく見えていませんでした。

    ビニール袋の中にまだ、羽となにかの部位が残っていました。
    重さからして、脚かもしれない・・・。
    全部ビニールから出してなかったのです。
    それは、白鷺に大変申し訳ないのですが、本当に申し訳ないですが。
    埋めた後だったので、掘り起こすことはせず、ゴミとして出しました。
     
    それ以来、なんで全部埋めてあげられなかったのかと、少し後悔してる。

    • マヒ マヒ より:

      そこまで弔えれば十分だと思います。自分なんてアスファルトから移動させるだけで精一杯でした…。意外と埋葬してあげている人がいて、少し安心しました。

  4. よっぴぃ より:

    夜中にポケモンしてたら道路で猫が死んでるのを見かけました。

    数分躊躇いましたが可哀想で移動させることに決めました。
    まだ体も硬直することなく温もりがあったようにも思います。

    自分も猫を飼ってますが悲しく安らかに眠ってくれると嬉しいです!

    • マヒ マヒ より:

      やっぱり慣れないと躊躇しちゃいますよね…。きっと猫さんも「ありがとう」って思ったはずです。

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